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学名の間違い表記に関して
 つい先日、自分のホームページの修正作業をしている途中で、ある植物の学名が間違って記載されていることに気づいた。気になって、本来の修正作業は中断して、個別の植物ごとにそれぞれ確認をしてみると、驚いたことに、次々と間違いが発見された。これには、我が事ながら、呆れるやら、恥ずかしいやら、ご覧いただいた方々に申し訳ないという気持ちやら・・・とにかくまさに汗顔の思いとはこのことと恥じ入った次第である。また、大いに反省をしている次第である。何しろ自分のホームページに「GKZ植物事典」などと大それたタイトルを用いているからだ。これでは、まるで信頼性に乏しい「植物事典」ということになってしまう。
 間違い表記をしてしまった最大の要因は私自身の性格にあると言えよう。何事にも緻密さに欠けているからだ。ただ、この駄文をお読みの方々が私と同様の間違いをしないためにもと原因を調べてみた。
 学名の確認作業をしていると、間違いの原因にはいくつかのパターンがあった。第一の要因は、ミスタイピングということになる。このケースが一番多かった。その中でも、一番多かったのは、キーボードのとなりのキーをタイピングしてしまった間違いである。たとえば、キーボード上では、「O」と「P」は隣り合わせて配置されている。自分では「O」と打った積もりでいても指先は「P」を叩いていたりするケースである。外国にメールを送ったりする場合に、当然外国語を用いることになるが、その場合に、終了後に、自動的にスペリングミスがないかの確認作業をパソコンが行ってくれるからとても有り難い。日本語ワープロの場合、「ん」の表記には「NN」と二度タイプすることになる。そのために、私の場合、英文でもそうしたタイピングをしてしまうことが多いのだ。たとえば、<typing>が<typinng>となってしまったりする事が多い。するとパソコンが、それは間違いではないかと問いかけてくるので送信前のメールを修正することが可能となってくる。また、モニターにディスプレイされた文字を目にしただけでも違和感を感じる筈である。ところが、学名の場合、「ギリシャ語をアルファベット表記した単語」と、「ラテン語やケルト語、その他の言語を等しくアルファベット表記した単語」とを組み合わせた合成語ということになる。日頃慣れ親しんでいない単語を目にしても、それにミスがあっても少しも違和感を感じないことになってしまう。緻密な作業を行う御仁の場合には、そこで確認の作業が行われるのだろうが、諸事にわたり緻密さが欠落している性格の持ち主である私の場合、最終的な確認作業を怠ってしまったことが学名の間違い表記の最大の要因であると今更ながらに反省をしているところである。
 学名の間違い表記の第二の要因は、スペリングミスである。たとえば、単語の最終表記が「ii」であるべきところを「i」で終わらせてしまったり、「Sch~」と表記すべき単語を「Sc~」と表記してしまったり、或いは、「L」と「R」を間違えてしまったりと言った間違いである。この点でも、最終的な確認作業を怠った私自身に起因していることになる。書物からパソコンに転記する際に、アルファベット文字は、私のような年寄りには文字の大きさが小さすぎることが見落としの大きな原因であるように思う。その点で、日本語というものは有り難いなとしみじみ思えるのだ。漢字と仮名文字とを併用するからだ。日本語の場合、重要な単語は漢字で表記されるので、仮名文字よりも目につきやすい。大事な言葉を見逃すことがないことになるのだ。ところが、欧米語の場合、そうした強調部分がないために、どれも同じ重要度を持った単語ということになる。そこで、欧米語では、特に強調したい部分がある場合には、イタリック体やゴチック体で表記するのかも知れない。その意味では、アルファベットで表記された言語の場合、仮名文字の中の漢字のような目立つ存在が無く、どれも平等に見えてしまうのだ。では、漢字ばかりを用いて表記される場合の中国語の場合はどうかというと、これまたアルファベット文字同様で、大いに困惑する。日頃日本語に馴染んでいるので、漢字ばかりだと、重要な単語はどれなのかと探さなければならない、特に中国語の場合、外来語の表記が二種類存在する。一つは、発音の似た漢字を探し出し、それで表記する方法である。たとえば、<miniskirt>を<迷你裙子>と表記するパターンだ。<裙子>とはスカートを意味する中国語の単語である。その前の<迷你>とは<ミニ(mí nǐ)>と発音するのだ。つまりミニの部分だけを発音が近い漢字で表記したことになる。中国語での外来語表記のもう一つのケースは、意味の似ている漢字を用いて表記する方法がとられる。上述のミニスカートの場合、<超短裙子>と表記されるのだ。こちらの場合は、日本人でも意味を理解できないこともない。しかし、<迷你裙子>となると文字通りに日本語化すると<あなたを迷わせるスカート>というような意味となってしまって、訳が分からなくなってしまう。しかも、欧米語の場合、単語と単語との間にスペースが置かれるが、中国語の場合にはそれもないので、これまた、漢字・仮名文字双方を併用する表記する日本人にとっては、幾分戸惑いを感じることとなってしまうのである。中国語に関してはまだまだ表記法や個別の漢字の持つ意味などの面で、大きな変化が生じている。それも、隣国の中国と台湾、そして我が国の旧来の漢字と現行の漢字表記の4点で大きな変化が生じているので、これまた戸惑いの要因と化している。大分、話が植物学名から逸れてしまったので、漢字表記に関してはいずれ別に項を新たにして触れてみたい。
 学名の間違い表記の第三の要因は、学名そのものが変化してしまったために生じたものがある。学問の世界が進歩発展する中で、特に分類学の分野で、新たに「科」や「属」を独立させたり、また、旧来の属していた範疇から別の分野へと移動したりが繰り返し行われているのだ。困ったことに、園芸界では旧来の属名のまま流通名が設定され、それが人々の間に定着してしまったりすると、話がややこしくなってくる。そうした学名の変化が行われているにもかかわらず、我が家の書斎にある植物関連の図書は、どれも随分古いものばかりで、新たに購入していないために、ホームページ上では、古い学名をそのまま記載してしまったということになる。新しい書物を補充して、まじめに勉強すれば良いのだが、既に我が家の書斎は飽和状態にあり、これ以上書物を増やしたら、自分の居所もなくなってしまう状況なのだ。そのような関係で、旧学名のまま記載した頁が多数残っているものと推測されるが、厳密に知りたい方は、どうぞご自身でお調べ下さるようお願いします。
 以下は、学名の間違い表記とは関係がない事項であるが、学名のありがたさについて触れてみたい。外国に出かけた際には、必ず現地の植物図鑑を購入するのが私の楽しみの一つであった。どこの国のそれにも、自国語と学名との索引が掲載されており、こんな有り難いことはない。たとえば、自分が調べたい植物をその国ではどのような呼び方をしているのかが分からなくても、学名からたどり着くことが出来るからだ。また、ネット上で検索する場合にも同様である。随分昔だが、知人からタイの植物図鑑を頂戴したことがある。立派な植物図鑑である。しかしながら、悲しいことに、タイ語やアラビヤ語の場合、まるで分からない。辞書の引き方すらも分からない。その図鑑に掲載してある植物の写真もどれも立派である。しかしながら、巻末に学名の検索リストが掲載されていたのである。これは大いに助かった。結局その図鑑を見ている内に、個々の植物の実物を目にしたくなりタイを訪ねる結果となってしまった。そして、いつものように、タイの植物図鑑を購入してきたのだった。今度は、タイ語と英語双方で表記されている図鑑を選ぶことが出来た。タイの植物図鑑ばかりでなく、他の国の植物図鑑も同様と言うことなる。
 植物図鑑ばかりではなく、外国の知人に写真を添付して現地名を尋ねたりしても、園芸植物でない限り、分からないと言う返事が返って来るばかりである。そこで、学名を添付すればご本人が植物名を知らなくても、調べていただけることとなるのである。
 今回は、自分で間違って表記してしまった学名に関してくどくどと言い訳を並べ立てた結果となってしまったが、今後は気をつけなければと自分で自分に言い聞かせた次第である。
 蛇足:まるで関係のないおまけ                          
 今回は、数日来胃潰瘍に悩まされているので、少しでも胃痛が治まるようにと願って「アダージョ:やすらぎのために5 <コンチェルトのアダージョ>」を聴きながらタイピングした。10年ほど前に、ソニーの通販から購入した10枚組のCDアルバムの中の一枚である。様々な協奏曲の中からアダージョの部分だけを取りだした内容となっている。BGMには最適のアルバムと思っている。
 H.21.08.20